『撲殺天使ドクロちゃん』(おかゆまさき)
おかゆまさき『撲殺天使ドクロちゃん』(電撃文庫)
収録作:表題作
区分:ライトノベル
あらすじ
「もう……撲殺しないって……今朝約束したばっかりなのに……」
僕・草壁桜は中学二年生の男子。未来の世界からやってきた天使のドクロちゃんに撲殺される日々を送っている。ある日、そんな桜の元に刺客が現れて!?
痛快な撲殺コメディ!
感想
コメディである。何といってもコメディである。
ドクロちゃんは天使なのだが、ヘタな悪魔よりずっと悪魔である。撲殺するし。
タイトルと死因は、僕を殺すから撲殺なのだろうか? そんな気もするし、偶然であるような気もする。何故なら、この物語には撲殺以外の死因は似合わないからだ。
撲殺というダイナミックな殺害方法のチョイスが、この物語を笑えるものにしている。脳漿を撒き散らしている様を笑えるのは、この小説だけではないだろうか。試しに他の殺害方法を考えてみると、撲殺という設定が如何に考えられたものであるかが分かるだろう。大抵の殺害方法では、この小説の持ち味の『うっかり殺っちゃった☆』的要素が減じてしまう。
はっきりいって、ドクロちゃんはサイコパスである。うっかり撲殺するわ、クラスメイトをニホンザルに変えるわ……そんな彼女を受け入れられるのは、やっぱり桜くんもサイコパスだからだろう。
「約束して。絶対に学校では誰も撲殺しちゃ、だめ」
お解りいただけただろうか? 学校『では』である。学校以外では撲殺を容認しているのだ!
まあ、冗談はさておき。
この小説に文章力がないと批判している御仁がいた。何と比較しているのか、と私は問いたい。小説には、その小説のジャンル・雰囲気に合わせた文体がある。たとえば「約束して」を「我と契を結び給へ」と書くのは、いかに文章力がありそうでも(なさそうだったらすみません)、この小説においては誤りだ。そういった意味では、これはベスト・チョイスな文体なのである。
ちなみに、肝心のギャグ。私のように中高生の頃の感性を持っている人間には笑えるが、年齢が離れれば離れるほど遠くに感じられると思う。できるだけ童心に戻って読んでみていただきたい。